いよいよ東京オリンピックがスタートしましたね!
こちらでは時差の問題もあってか、はたまたコロナにより注目度が下がってしまったのか、あまり注目度は高くありません。。。
個人的には遠い私の出身地がテレビ放送されているのもあり、ちょこちょこ時間を見つけては観戦する様にしています。
ただ日本とイタリアでは得意競技が異なる為、イタリアの放送を追っているともれなく日本のメダル獲得を見逃しますw
たまたま観たテコンドーやフェンシングでイタリアがメダルを獲得しましたが、全くルールが分からず勝ったのか負けたのかわからないままメダル獲得していました。
どこかのタイミングで白熱した日伊戦が観たいなぁ、なんて淡い期待を抱いています(笑)
さてさて今日こそ新作革靴についての投稿を締めていきましょうw

今回の工房は兄弟二人で経営しているとっても小さな工房ですが、流石にこの地域だけあって設備がとてつもなく充実しています。
たった二人の工房規模でこれだけの設備を揃えているところはまず見つからないでしょう。
10〜15人くらいは中に職人がいてもおかしくないくらいには揃っています。
この設備が整っているというのは非常に重要で、工房内で完結出来る事が多ければその分柔軟な生産が可能になり大きなコスト削減に繋がります。
この工房の成り立ちは正にこの地域らしく、元々先代が小規模工房としてスタートした後、地域の生産規模拡大に合わせて少しずつ設備が拡大していったようです。
その時代の遺産がこの充実した設備であり、さらにもう一つ素晴らしいものが残っています。

そう、 木型です。
現在イタリアの木型生産はほぼ2社の独占状態だったりします。
それまでは凄まじい数の木型メーカーが存在し、その中でも評価の高かった木型メーカーのものは現在でもかなりの高値で取引されていたりします。
少し話は逸れますが、少しだけ木型の話をさせてください。
よっぽどの革靴愛好家でもなければ、木型と言われてもあまりその重要性にピンとこないかもしれません。
恐らく製法のほうがよっぽどわかりやすい部分かもしれません。
しかし実際の靴作りにおいて最も重要視されるのは木型選び→型紙作成→釣り込みの順です。
ここまでで革靴のほぼ80〜90%は決まります。
誂え靴に至っては、ここまで終えられればほぼ完成したようなものです。
そのためイタリア誂え靴職人の工房には、そこら中に釣り込みまで行われたサンプルが転がっていたりします。
ある私の知るある職人の工房はそれこそこうしたサンプルで足の踏み場もないような状態ですw
恐らく100足以上はあるはず。。。
型紙作り、釣り込みは常に木型と向き合う工程です。そのためこの根幹である木型選びは靴作りにおいて非常に重要な部分といえます。
だからこそ未だに評判の高かった有名木型メーカーの木型が靴職人間で高値で取引されるのです。
Gattoという工房を知っている革靴愛好家もいるのではないでしょうか。
以前ローマにあった有名老舗誂え靴工房です。
職人の高齢化で閉業した工房ですが、その後ある有名革靴ブランドによってそのブランドを買収されました。
そのため現在でも実はこのブランド自体は残っていたりします。
しかしこれはあくまでもブランドネームのみの買収であって、木型やそれに付随したものはこの買取りには含まれていませんでした。
それはこの職人たちがこれらの販売を断り、自分たちの弟子や懇意の現役職人に譲り渡したためです。
木型とはこれほどまでに靴職人にとって大切なものであり、正に財産そのものなのです。
もっと木型について書いていきたいのですが、一旦ここまでで話を戻しますw
実はこの工房凄まじい量の木型を大量に所有していました。
それももともと様々な工房やメーカーの外注生産を担っていた事もあり、そのバリエーションも豊富です。十畳くらいの倉庫は上から下まで木型で埋め尽くされています。
今は無きある有名革靴工房のものから、前述したような評価の高い木型メーカーのものまでほぼほぼ網羅しています。
取り扱う木型のバリエーションの多さで、この工房の器用さが伺えます。量産用の木型から、かなり複雑な誂え靴用のものまで様々です。
その中でも今回、とある今は無き老舗木型メーカーのものを採用してみました。
こちらのメーカー、30年ほど前になくなってしまってはいるものの未だに評価の高い木型です。
ここの木型をベースに使っていた有名誂え靴工房も少なくありません。

ただこのまま採用してしまうと間違いなく日本人の足に合いませんので、こちらをベースに若干の修正を加えました。
実はこの修正にもちょっとした秘密が隠されています。
このオリジナル木型はもともと誂え靴用途に作られたものですが、今回修正を加えたものはデザインに影響を与えないよう最低限の変更に留めつつ汎用性を向上させています。
これに関してはちょっとした企業秘密なので詳しくは書いていきませんが、一度試しに履いてみればその違いを実感できるはずです。
要所をしっかり押さえた設計とだけこちらには記述しておきます。
さてさて、恐らく多くの方が気になっているであろう製法についてもそろそろ触れていこうと思います。
今回の革靴はとある理由から、こちらの製法を採用しました。
革靴好きには堪らないハンドソーンウェルト製法です。
この工房は前述通り設備が揃っているので様々な製法を選択する事が出来るのですが、今回利用する革が正真正銘のベビーカーフであることからハンドソーンウェルト製法を選択しました。
ベビーカーフは良くも悪くも繊細な革なので機械生産にはあまり向いているとはいえません。
勿論アッパーとライニングの間に革芯を入れるなどで対応は可能ですが、それではベビーカーフの柔らかさや馴染みを失ってしまうためそもそもベビーカーフを使う意味が薄れてしまいます。
勿論革の表情や光沢感など表面上の良い点はありますが、それでもやはり魅力半減といったところです。
そもそも折角掘り出したデッドストックレザーなので、ありがちな「側だけの時計」みたいなものは作りたくありませんでした。
手生産になり大幅にコストが上がるように感じられますが、この土地の場合ちょっと事情が異なります。
前回の投稿に書いたのですが、この地域の場合生産工程自体をオーダーメイド出来るのです。
部材、革を持ち込むだけではなく、職人自体を指定する事も可能だったりします。
例えば接着しかやっていない量産靴工場に、マッケイ縫いを担当する工場を間に入れ込む事でマッケイ靴を作れたりするのです。
今回の場合はそれに近い形でハンドソーンウェルト製法を採用しました。
いわば持ち込みのような形なので、コストを最小限まで抑える事が可能です。
こうした自由度の高い靴作りの形は正にこの土地ならではといえます。
こうした土地の特徴を最大限に生かした生産により、イタリア製ハンドソーンウェルト製法でありながらかなりコストを抑えることが出来ています。
きっとこの価格には皆さん驚かれるはず。

さてさて最後に少しだけこちらの工房について書いていこうと思います。
一部のビスポークを除いて、基本的にこちらの工房は靴ブランド向けの革靴生産のみ行っています。
靴ブランド向けの革靴生産と聞くと少し不思議に思われるかもしれませんが、実は革靴ブランドとして有名なブランドでも実際の生産を外部に委託しているというところは少なくありません。
皆さんが知っているイタリア靴ブランドでも、実は色々なところが外部委託で作られていたりします。
この工房は先代からこうした外部委託を受けて靴作りを行ってきており、現在までにかなり多くのブランドを手掛けています。
実は日本でも有名なあるブランドも、元を辿ればここにたどり着きますw
地域内でひっそりとやっているビスポークですが、ちょっとした出来事をきっかけにアメリカのあるミュージシャンにも作っていますw
この人、恐らく誰もが知っている超大物です。。。
そもそもこのお方に革靴のイメージが全くないのですが、二人で仲良く靴を抱えて写真を撮っていたので恐らく履くのでしょう。。。
この工房を一言で表現するならば、とても器用な工房です。
マッケイからノルベジェーゼまで、機械生産、手縫いほぼ全ての製法を選択する事が可能です。
実は一つの工房内でこれら全てを完結出来るところは非常に希少です。
イタリアだとsantoniが器用なブランドとして有名だったりします。
日本だと何故かマッケイのとんがり靴のイメージしかありませんが、こちらでは器用な靴メーカーの代表格として認知されています。
実際ヨーロッパではグッドイヤー、ノルベジェーゼといった上位コレクションを中心に展開しています。
最後の最後でまた若干脱線してしまいました。。。何故かsantoniの宣伝をしている始末ですw
長くなってしまったので一旦ここで締めますが、今回紹介させて頂いた新作革靴は恐らく10月中旬から下旬頃には市川のRieto Brioさん、福岡のDresswellさんにて実物をご覧頂ける予定です!
ベビーカーフの風合いと、足を通した際にはヴィンテージラストのフィッティングにきっと感動して頂けるはず!!
それではまた次回!
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