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執筆者の写真Bottega di Pinocchio

ベビーカーフ2

皆さん、こんにちは!

今回は前回に続いて今年秋からスタートする新作ベビーカーフレザーシューズについてご紹介していきます。





前回は採用する革についての内容に終始してしまいましたので、今回は肝心の革靴について書いていこうと思います。

とはいえ、ただ革靴についてつらつらと書き連ねても面白くないので、こちらの革靴を参考に色々なイタリア革靴界の歴史に触れながら進めていこうと思います。



早速ですがイタリア靴というと、イタリアのどの地域が思い浮かびますか?

イタリア革靴愛好家の方であれば、マルケ州もしくはローマ、ナポリといったところではないでしょうか。

相当に通な方、または私の以前からの投稿をご覧になっていただいている方なんかだとボローニャを挙げられるかもしれません。


そしてそのどれもが正解です。


しかしイタリア靴ならではの面白さは、それをひとまとめにしてイタリア靴と定義することが出来ないというところだと思います。

つまり上記に挙げた地域はともに革靴産地として有名ですが、例えばマルケ靴とボローニャ靴は同じ革靴ではあるものの全く異なる代物です。

ローマ靴とボローニャ靴も勿論異なりますし、ナポリもそのどちらとも違う代物です。






実はイタリア靴産地というのは決して上記の地域だけではありません。

ミラノやベローナといった北イタリアにも革靴産業が盛んな地域はありますし、実は一つの地域を指してイタリア靴産地とは言えないのです。

そして上記した通りそれぞれの地域性が革靴に表れるというのが、イタリア靴の最大の魅力であると私は考えています。


小国が統一されイタリアという国がまとまったのは19世紀中ごろとかなり遅く、ある程度現在の形に近づいたのは19世紀前半の第一次世界大戦が終結した後です。

北イタリアの一部に関しては第二次世界大戦後に他国との国境が設けられ、現在のイタリアが完成します。


こうした事もあってイタリアには未だ比較的最近まで小国の集まりであったという名残を感じることが多くあります。

わかりやすいのは自身をかなり小さい範囲を指して~人であると定義することであったり、方言の豊富さかもしれません。

日本でも関西人、九州人、関東人etc...といった表現がありますが、イタリアの場合この範囲が更に狭いのです。県単位のミラノ人、ボローニャ人といったレベルに留まらず、更に小さな町単位で自身のアイデンティティーを定義することも少なくありません。

また方言に関しては日本にも様々なものがありますが、イタリアの場合数キロ離れた地域では異なる方言が使われていたりとそのバリエーションが非常に豊富です。


当然地域によっての文化も異なりますし、それに伴い生活習慣や人の性質もかなり違います。

こうした違いも日本のそれとはまったくの別次元で、実際こちらで同じ商売を南イタリア人とするのと北イタリア人とするのとでは心構えや関わり方は変わってきます。

これはイタリアと関わる仕事をしている人であれば、100%共感してもらえるはずですw


良く言えば伝統や文化がしっかりと息づいているといえるかもしれませんが、悪く言えば非常に保守的なのがイタリアという国だと言えるかもしれません。

(あのマクドナルドですらマックカフェというイタリア文化に合わせた展開をするまでは大苦戦を強いられ、撤退すら考えたと言われています)





前提としてこうした地域ごとの文化が色濃く現れるのがイタリア靴なのです。

こうした文化というのはその地域の土地柄を反映しており、そうした事を意識しながらイタリア靴を眺めてみると今までにはない面白さに気付くはずです。


例えばイタリア靴といえばおそらく一番手に挙がるであろうマルケは、戦時下における軍靴生産を背景に成長した工場生産による一大革靴生産地域です。

イタリアといえば小さな工房による手縫い靴のイメージがあるものの、そんなイタリアにおける革靴生産地域として一番手に挙がる地域がマルケというのはこうした理由もあってかなり矛盾しているんです。

マルケ靴で有名なあるイタリア靴がありますが、その手縫いラインはマルケではなく違う地域で作られていたりするのは良い例かもしれません。

その逆にローマやボローニャ製を謳っている革靴でも簡素な作りのものであれば、フタを開けてみると実はマルケ生産だったなんてことも往々にしてあります。

これは決して良い悪いの問題ではなく、それぞれの地域における単なる立ち位置の違いです。


すべてを詳細に書いていくといつまで経っても本題の新作革靴の紹介に入れないので、以降はざっと簡単に書いていきますw





私が個人的に最も好きなボローニャ靴は、イタリア北中部という交通における要所である地域性を大いに反映しているといえます。

今でこそ色々な路線が出来たイタリア鉄道事情ですが、それまではボローニャなくして南北の移動は考えられませんでした。北と南の入り口として常に人が溢れている街、それがボローニャでした。

この需要を求めて多くの職人が北や南から集まり一大革靴市場を形成したのが、ボローニャ靴の始まりです。


ローマの正統クラシックスタイル、当時メゾンブランド生産の要所であったナポリのモードスタイル、スキーや登山靴を背景とした北部イタリアの特殊な手縫い技術、マルケ的な簡易な量産靴生産ノウハウが一同に会した場所こそボローニャです。


日本でも比較的知られているイタリア靴の多くがボローニャを発祥としていますが、そのすべてに分かりやすいそのブランドならではの特徴がありますよね?

Branchiniといえば、testoniといえば、Bonafe`といえば。。。そう考えてみると、こうした以前の靴の街ボローニャを少なからず感じられるはずです。


もともとこうした靴メーカーは小さな靴工房に過ぎませんでしたが、それが世界的に展開していくにつれて大規模生産に変わっていけたのはマルケ的な量産ノウハウがあったからだと思います。


かなり駆け足気味な説明になってしまいましたが、これがイタリア靴は決して一括りで言い表すことが出来ないということの理由です。


本当はまだまだ書き足りないくらいなのですが、一旦ここまででこの件に関しては止めておきます。。。そうしないといつまで経っても肝心の新作革靴紹介に辿りつきませんw


というわけで、ここからはこうしたイタリア靴文化を背景に今回の新作革靴について紹介していきます。





しかしまたいつもの通り本題に入るまでに長々と書きすぎてしまったので、詳しい紹介はまた次回に回したいと思います。。。w


今回はせっかくなので、この革靴を手掛けた地域について最後にご紹介して終わろうと思います。


実は今回の革靴、上記で挙げた地域とは異なる場所で手掛けています。


おそらくこの地域に革靴産地としてのイメージを持たれている日本人の方はまずいないでしょう。

なのでこの地域に関しては企業秘密としてこちらには明記しませんが、ここの特色についてはとても興味深いので少しだけ触れていきます。


この地域、イタリア靴界隈ではかなり有名な革靴産地です。

ただしこうした情報はほとんど表には出てきません。

それは何故か?。。。

実は現在多くのメゾンブランドがこの地域の工場や工房で生産を行っているため、私と同様に基本企業秘密として隠されているためです。


またマルケとは異なり、革靴産地としての成り立ちが大規模生産ではないというのもとても興味深いといえます。

ここでの革靴生産はイタリアらしい工房靴とマルケ的な工場靴の丁度中間といったところでしょう。


この地域はもともと資産家の別荘地として栄えました。

それと革靴産地の何が関係あるのかと不思議に思われたのであれば、私的にはしてやったりだったりしますw


実はこうした資産家は休暇で別荘地に行く際、お抱えの革靴職人を伴ってこの地域にで休暇を過ごしていました。

つまりこの休暇中に自身の靴を誂えさせていたという背景が、この地域が革靴産地へと変貌させました。


日本ではなかなか考え難く、嘘のように感じてしまいますが正真正銘本当の話ですw


そのためこの地域にはイタリアの様々なところからお抱え職人が集まりました。

それに伴い靴の部材屋や革屋などが集まり、そして革靴生産に適した土地柄を形成するに至るのです。


マルケと異なるのは、工業的な発展ではなく一職人規模で発展をしていったという点でしょう。

その発展に伴い革靴産地としての下地が整った後工場化が進んだため、現在でもその両方が残ったというのがこの地域の特色といえます。





少し脱線しますがこの革靴産地として発展する中での市場規模はかなり大きかったようで、こうした利権を握る組織も同時に成立することになったようです。

所謂ゴッドファーザー的なやつですw


正しくはゴッドファーザー的な組織ではなく、あくまでも革靴利権に伴う組合的なものだったらしいのですが、これが例のそれ以上に危険な存在だったとのこと。。。

この地域に行くたび、毎回その話題が出てくるのでおそらく本当に凄かったのでしょう 苦笑


話を戻します。。。w


この地域における靴作りの利点は、何といってもかなり自由度が高いことが挙げられます。

単価的な選択肢、技術的な選択肢、そして更に部材屋も多くいる為素材的な選択肢も豊富です。

他の地域では考えられないような超絶イレギュラーな生産方法も取れますから、生産ラインをオーダーメイド出来るという万能さです。


これだけ揃っていれば当然企業秘密にされるわけです。。。w


ここまでかなり長くなってしまいましたが、次回はそんな地域で作成した新作革靴について今度こそ本当にw紹介していきたいと思います。


勿論担当する工房についてもしっかり紹介してきますので、また次回楽しみにしていただけると幸いです!




















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