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Pezzettino Ultimate Sandal 三層サンダル改(仮)

  • 執筆者の写真: Bottega di Pinocchio
    Bottega di Pinocchio
  • 2024年6月22日
  • 読了時間: 10分

先週の怒涛の日々から2週間弱も日にちが空いてしまいましたが、気を取り直して今夏最新モデルのサンダルについて紹介していこうと思います💪

と、その前に、、、少しだけ今までのモデルについて簡単に触れていこうと思いますので、いつもながらの少々長めな前フリにお付き合い下さいw




今回の一連の投稿を通してPezzettinoサンダルシリーズのデザインには「意味」があるのだと、各投稿の中で繰り返してきました。

そしてそのベースには「サンダルは負荷を分散させるためにもアバウト(適当)に作るべき」というサンダル生産が専業化しているイタリアサンダル作りならではの哲学がありました。

オリジナルサンダル→グルカサンダル→UTサンダルという一連のモデルの流れは、これを前提にして徐々に負荷を分散させるのが困難なモデル、言い換えれば「適当」なフィッティングを前提に作るのが難しいモデルになっていきます。

整理するとそれぞれに想定される負荷がかかる部分はオリジナルサンダルは親指ストラップの一部分のみ、グルカサンダルは足の滑り込みを防ぐためのワイズと甲の一部分、UTサンダルは甲部分全体とモデル毎に負荷がかかる面積は広くなってきます。

負荷の面積が広くなる=アバウト(適当)なフィッティングを実現するのが難しくなるというのが、サンダル作りと言っても過言ではありません。

さらに突っ込んだ書き方をしてしまえば、この一連のモデル変化で少しずつ革靴に近づいているという言い方も出来ます。






オリジナルサンダル、グルカサンダルと比較するとUTサンダルなんかはかなり革靴的なフィッティングになるはずです。違いはかかとがあるかないかでだけで、このモデルにかかとがつけばそれは紛れもなく革靴のフィッティングなります。

実際に着用すればグルカサンダルとUTサンダルの甲部分のフィッティング感覚が全く異なることにも気付いてもらえるはずです。そしておそらくUTサンダルのフィッティングはかなり革靴の甲部分のフィッティングに似ていると感じるのではないでしょうか。

実はPezzettinoのサンダルシリーズスタート当初からこうしたモデル変革への狙いがありました。

とても簡単な言い方をしてしまえばこのシリーズを通して、「革靴屋でなければ作れないサンダル」を作ろうという目論見があったのです。

とはいえ、何度となく繰り返し書いているように、サンダルと革靴は同じ履物でこそあれ、そこに用いられる知識や技術は全く異なります。これを同じように考えてしまえば、巷にあふれる「サンダル」を謳った革靴ないしは革靴のように足を痛めながら履き慣らす必要がある「サンダル」が出来上がります。





Pezzettinoもサンダル企画をスタートした当初は全くもってサンダル作りの知識がなかったため、オリジナルサンダル作成時はかなり厳密にサンダル作りの基本に従いました。

しかしここから少しずつ革靴的なアプローチが出来るようにと、各モデルを通して少しずつフィッティング精度を上げることが出来るようデータを集める仕込みをしていました。この「仕込み」については超絶企業秘密なので、詳しくは書けませんが。。。

とはいえこれがあったからこそ、見た目だけでなくフィッティング感覚が全く異なる各モデルへの変化を経てもその快適性を失わずに済んでおり、ここにもこの職人の技術力がキラリと光ります。


毎度の事ながら前置きがめちゃくちゃ長くなってしましました。。。苦笑

ここまでを超簡単にまとめると、それは名実ともに紛れもなくサンダルでありながらPezzettinoサンダルシリーズは徐々に革靴的なアプローチがされたサンダルへと変化しているという事です。





とはいえ、おそらくこの最新モデルを見て疑問を持たない人はいないでしょうw

誰がどう見てもサンダルそのものだし、そもそも名前も「三層サンダル改」って。。。苦笑


名前に関してはちょっとだけ言い訳をさせて下さい(笑)

この最新モデルもともとは2025年ローンチ予定だったんです。。。そのため正式なモデル名なしでスタートしてしまいました 苦笑


このサンダルはとある見方をするとめちゃくちゃ革靴に見えてきます。


革靴をMTOないしはビスポークで購入した事があるでしょうか?

そのメイカーや職人によって採寸の方法は様々ですが、その中でも必ずどこでも採るであろう採寸場所が4点あります。


足長、足囲(ワイズ)、甲囲(ホールガース)、そしてかかとから甲までの長さです。


ちょっと脱線してしまいますが、甲だけは2回別々の場所から採寸するのですが、ここからもわかる通り靴作りにおいても革靴のフィッティングにおける「甲」というのは最も重要な部分です。。フィッティングでワイズばかり気にしている人が多いですが、本来は「甲」のフィッティングこそ重視すべきポイントです。





さて話を戻します。。。


この採寸場所と照らし合わせてPezzettinoサンダルシリーズを見ていくと、、、なんとなく見えてくるのではないでしょうか?


オリジナルサンダルは「アバウト(適当)なワイズと親ストラップをフィッティングの前提としたサンダル」


グルカサンダルは「足の滑り込みを防ぐためにオリジナルサンダルよりもより精度を上げたワイズとアバウトな甲フィッティングを前提としたサンダル」


UTサンダルは「足の滑り込みを防ぐためにグルカサンダルよりも精度を上げた甲フィッティングを前提としたサンダル」


そして今回の新作サンダルは「アバウト(適当)なかかとから甲周りのフィッティングと親指ストラップをフィッティングの前提としたサンダル」


というのが、我々作り手視点で見たときのサンダルの正体だったりします。

特に今回の最新モデルに用いた「かかとから甲までの長さ」というのは、革靴作りにおいて場合によっては「甲囲」以上に重要な寸法で、足の滑り込みを防ぐとても大切な役割を担うデータです。

しかし、それ故にこのフィッティングを前提としたサンダルが最も正しく作るのが難しいサンダルなんです。。。





ここでもう1度思い出して下さい。

サンダルはどこに負荷が掛かるか考えて、その負荷が分散されるようになるべくアバウト(適当)に作らなくてはならないのです。

その視点で見ると、このストラップ配置はまぁまぁ最悪な構成だったりします。


かかとから甲までの長さというのは足の滑り込みを防ぐ最も重要な採寸データであると前述しました。

なかなか字面ではイメージし難いと思うので、ちょっとした例を出して説明します。

革靴のフィッティングの失敗でかかとが浮くということがありますが、この原因は甲部分のフィッティングが合っていない事を原因としています。その中でもかかとから甲までのフィッティングが正しければ、こうしたかかとの浮きはまず起こりません。

たまに「どこどこの靴はかかとが大きいから〜」だなんていう人がいますが、それはかかとではなくて甲が合っていないだけです。甲が革靴内に滑り込まなければ、踵は浮きようがないためです。


つまりこのかかとから甲までのストラップを正しいデータを元に配置してしまうと、遊び(アバウトさ)が失われてしまうため異なるところに負荷を生み出してしまうんです。。。

このサンダルの場合は親指ストラップ内側側面に対してでした。





この最新モデルは一見すると親指ストラップモデルであるが故にオリジナルサンダルに近いと思われてしまいそうですが、これは前述した通り全く異なるフィッティングを前提に作り上げています。

オリジナルサンダルは使われている知識や技術両側面において、最もサンダル的に作られています。

そのため親指ストラップに掛かる負荷も非常に上手い具合に分散されるため痛くなりにくいという作りでした。

しかしこの新作サンダルはかかとから甲までの長さをフィッティングの前提としてしまっている以上、どうしても足の滑り込みに対処してしまうため親指ストラップの一定部分に負荷を集中してしまうという弱点がありました。これこそが遊び(アバウトさ)のなさによる弊害です。

このモデルは見た目以上に革靴的といえる所為と言えるでしょう。





この点を無事に改良できたからこそ言えるのですが、この弱点を発見したのは実は我々ではありません 苦笑


この部分に対するリクエストを上げてくれたのは、このPezzettinoサンダルシリーズを毎年エクスクルーシブ展開してくれているDresswellさんでした。

おそらくこのリクエスト無くして、今回のモデルをこのレベルで仕上げることは出来なかったはずです。。。

というのも、正直なところ我々はもっと異なるところに懸念点をもっていたからです。結果としてもっとも正しい視点で今回のモデルを捉えていたのがDresswellさんであったのですが、ここのオーナーさんは我々作り手側からしてもかなりの目利きです。


毎度繰り返しになってしまいますが、今回のモデルに用いた「かかとから甲の長さのフィッティング」というのはサンダルに用いるにはなかなか鬼門となるデザインです。

靴作りの視点でいえば、この部分へのストラップは攻めたフィッティングにしたくなります。

しかしそうすれば確実にその部分に負荷が生まれるため甲周りが削られて痛くなり、さらに親指ストラップを配置しようものならおそらくもう履きたくなくなる程に痛いサンダルの出来上がりです。この形状のサンダルもたまに見かけますが、たぶんめちゃくちゃ痛いはずです 苦笑


対してこのストラップをより緩く設定して親指ストラップを前提にしたフィッティングにしてしまえば、それこそオリジナルサンダルと同じ設計のサンダルになってしまいます。。。


とまあ、当初はなかなか手詰まり感があったわけです(笑)

これが2025年ローンチ予定だった理由です。


そんなタイミングでサンプルで持ち込んだプロトタイプを元にリクエストを上げてくれたのがDresswellさんでした(泣)


オリジナルサンダルの時とは違って親指ストラップが食い込んで痛くなりそうなので、この部分で何かしらの対処方法ありませんか、という内容だったのですがこれが我々にとってかなり目からウロコな指摘内容だったのです。

ここまで我々は甲ストラップの高さの改良だけで頭がいっぱいだったので、親指ストラップの改良についてはほぼノーマークでした。

わかる人にはわかると思いますが、そもそもこの事象に対しては甲ストラップの改良では全く効果的な改良は見込めません苦笑

このリクエストをきっかけに親指ストラップに視点を移してからはめちゃくちゃ改良が捗る捗る。。。(笑)

結局のところ我々作り手もどれほど真剣に取り組んだところで完璧ではないということです 汗

そうならないように気をつけていてもついつい頭でっかちになってしまう瞬間があるのです。。。


改良方法についてはこちらでは企業秘密として伏させてもらいますが、どうしても気になる方はDresswellさんに尋ねてみてください(笑)


このリクエストを元になんとか明確な改良方法を見い出せた事もあり1年前倒しで少しだけ2024年からの販売をスタート出来ることになった最新モデルサンダルですが、今までのどのサンダルとも異なるその履き心地にきっと驚いていただけるはずです。

おそらく今までのサンダル以上にとても革靴的な履き心地に仕上がっています。

かかとがないサンダルなのに、かかとが思いの外遊ばないんです。おそらくグルカと比較してもそう差はないレベルに浮きません(笑)これが革靴的なアプローチの効果です。





Pezzettinoサンダルシリーズはこのモデルをもってスタート当初から描いていた全てのデザインを作り上げたことになります。

今後はこの4モデルのフィッティングをベースに、より自由なデザインを応用していこうと考えています。

それぞれ前提とするフィッティングが異なるモデルであるため、モデルによる優劣はありません。

作りの手間による金額の差こそあれ、それぞれの良し悪しはあくまでも各々の好みによります。

私は個人的に今回の最新モデルの履き心地が最も好みですが、私の妻はグルカサンダルを一番愛用しています。

作り手の職人はここ数年はUTを好んで履いていますが、それ以前はオリジナルだけを履いていました。


勿論、それぞれ4モデル全く異なるデザインなので好みのファッションに差し込んでもらえるというのもこのサンダルシリーズの楽しみ方ではないでしょうか?





皆さんはどのモデルが好みですか?


Bottega di Pinocchio 

Yuki Takemasa

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