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Pezzettino Ultimate Sandal 2024 オリジナルモデル

執筆者の写真: Bottega di PinocchioBottega di Pinocchio

更新日:2024年6月6日


去年をもって一時的に生産休止となっているオリジナルサンダルだが、Pezzettinoのサンダルはこのモデルからスタートした。

「これまでにない最高のサンダル」を目指して手掛けた一足。

Pezzettino サンダルシリーズのアイデンティティである底周りの構造もこのモデルを起源として完成し、この構造に至るまでにとてつもなく長い時間を費やした。。。当時は常に職人との打ち合せのたび午前さまの日々だったし、イタリア最高のサンダル職人の元へ教えを乞うため毎月とんでもない距離の移動をしていたものだ。この思い出を書き始めるときりがないので、こちらでは割愛w

底周りの構造については毎年ブログなり、インスタ投稿で書いているのでこちらには書かないが、このオリジナルサンダルがこのデザインになるに至った経緯についてこちらで触れていこうと思う。





当時(8年前)絶対的な自信をもてる構造にこそ辿り着けたものの、足をホールドするアッパー部分の構造には確信をもてる仕様を見つけられずにいた。

ここに安直な革靴的アプローチをしてしまうと、単なる靴擦れで足が痛くなるサンダルが出来上がることになってしまうためだ。

そもそもサンダルと革靴は全く異なる分野のもので、世の中に溢れている「最初は痛いが徐々に慣れてくる」らしいサンダルなんかは正にこの点を誤って作ってしまっているのだと思う。

サンダルに関していえば、革靴とそもそも負荷が掛かると前提にされている場所が異なる。そのため突き詰めるとその負荷をどのように分散させるのかという考えに行きつくのだが、イタリアのサンダル文化の中ではこれがしっかりと数値的な比率アプローチがされていたりするのだ。

ここをすごーく簡単にわかりやすく説明すると、サンダルにはサンダル用の木型があるし、わざわざ革靴用の木型でサンダルを作るなんてことはしない。

上記した「最初は痛いサンダル」なんていうのは、結果としてこの点を誤った木型を用いている。





話を戻そう。

Pezzettinoファーストモデルのサンダルは親指ストラップで足の滑り込みを防ぐデザインを採用したのだが、これには明確なワケがあった。

当初は親指ストラップデザインではなく、甲で足を覆う所謂シャワーサンダルデザインを採用するつもりでだった。革靴作りを本業とするPezzettino職人にとって、親指ストラップはより靴擦れのリスクが高まるように思えたからだ。

しかしこれ、実はレザーサンダル作りの中では全く逆だったりする。少し雑な言い方をしてしまえばレザーサンダルはなるべく「アバウト」な作りをしたほうが結果が良いのだ。これは何もテキトーに作れば良いということではなくて、あくまでも「適当」にという意味合いだ。

シャワーサンダルのフィッティングの肝になるのは「甲」部分だが、革靴のフィッティングで最も重要になってくるのも同じく「甲」部分だ。

日本人はワイズが大好きなので幅ばかりを気にしているが、既製靴ということであればぶっちゃけ「甲」部分のフィッティングさえ誤らなければおかしなことになることはない。サイズが合っていない靴を履くと良く踵が浮くとか足が遊ぶなんていうが、それはそもそも甲が合っていないからそうなる。むしろワイズばかりに囚われていると、結局こういうことになりがちだったりする。

こうしたことからもわかる通り、基本的に木型から革靴に取り組むとなった場合、この「甲」部分にはめちゃくちゃ気を使う。とてもじゃないけど「アバウト」なんて言っていられないのだ。

革靴感覚でシャワーサンダルに取り組むとどうなるのか、勘の良い人ならここで気付いたかもしれない。

そう、甲を攻めすぎてしまい足を削りにいってしまうのだ。これが「最初は痛いサンダル」の正体だったりする。

サンダルは踵がなかったり、つま先がなかったりすることで革靴に比べてホールド力が低い。

(※踵とつま先があるサンダルを謳った革靴があるが、個人的な意見を言わせてもらえばそれは紛れもなく革靴であってサンダルではないと考えている。)

そのためあまりに攻めすぎた設計をしてしまうと負荷が分散しないため、ホールド力が無い故にダメージが一点に集中してしまう。シャワーサンダルタイプのレザーサンダルで甲部分が削れてしまうのはこれが理由で、仮に革靴であればある程度キツめの甲フィッティングであっても削れてしまうというところまではいかないだろう。革靴は足をしっかりとホールドできていれば、負荷は足全体に分散する。

サンダルはホールド力が無いからこそ、負荷を分散させるギミックを入れ込む必要がある。それこそが上記した「アバウト」な設計だ。

親指ストラップデザインのサンダルはこの点「アバウト」なアプローチがしやすい。負荷がかかるのが親指の股に限られるので、この部分の負荷を分散させるだけで良いためだ。そこでPezzettinoが採用したのが初代サンダルのデザインに行き着く。

このデザインは親指ストラップ+ワイズのストラップで足を受け止めるという設計になっているので、一見親指ストラップによって親指の股が痛くなってしまいそうに思える。しかし実際に履いてみると思いの外違和感を感じないし、痛くなるなんてこともほぼほぼ無い不思議な履き心地に驚かれた方が多いはずだ。

もちろん人の足の形は十人十色だから100%ということはあり得ないが、これほどこの形状のサンダルで足が痛くならなかったサンダルというのは間違いなく無かったはずである。

それもそのはずで親指ストラップを補助するように配置されているワイズ部分のストラップは、絶妙なバランスで「アバウト」に足を「掬う」ように設計している。ホールドではなくて、「掬う」という言葉を使っているのにはしっかりとした理由がある。





初代サンダルのワイズストラップは一見かなり緩いように思える。つまりホールドするというよりは、歩行時に足をネットのように掬うような感覚で足を包み込む。このストラップの配置角度であったり、長さというのがこのサンダルを紹介するたびに出てくる比率というものであるが、これが「アバウト」の正体だ。親指ストラップによって親指の股に掛る負担を分散させる効果を発揮している。もしもこれがしっかりとワイズをホールドするタイプのものであったらどうだろうか?

結果として親指股の一部分にのみ負荷が掛かってしまうから、当然その部分が痛くなってしまう可能性が大きくなってしまう。ビーチサンダルや雪駄なんかで指の股が痛くなるのはだいたいタイトなフィッティングをした時に起こるが、これとまったく同じことである。

前回の投稿で初代サンダルが最もリスクが低いデザインを採用したというのは、負荷が掛る部分が非常に局所的であるという意味でのことだ。

初代サンダルがあのデザインに行き着いたのは、何もただ単純にかっこいいサンダルを作ろうと思ったからではない。あのストラップの設計や配置には明確な理由があるし、その上でさらに美しいサンダルを作ってしまうのだからPezzettinoの職人は恐ろしい。

さらにこの初代サンダルはその後の各モデル作りのための情報収集を兼ねたモデルであったのだから、本当に抜け目のない作り手だ。。。

現在生産効率改善のため一時的に休止している初代サンダルであるが、またどこかで再販出来るタイミングを見つけたいものだ。

画像の私の初代サンダルは最初期のプロトタイプであるが、もうかれこれ8回の夏を過ごしている。もちろんこれから訪れる今年の夏も変わらず現役で着用予定だ。


Bottega di Pinocchio

Yuki Takemasa

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