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執筆者の写真Bottega di Pinocchio

Pezzettino Ultimate Sandal UTサンダル

2年程待ちに待って私の元にやっと来たPezzettinoシリーズ第3弾Ultimate Toiletry サンダル。

毎年ありがたいことに生産キャパ限界まで発注頂いているサンダルシリーズですが、こちらのモデルをローンチしてからは企画に携わっている私個人分すら生産出来ない状況になりました 苦笑

前回のグルカサンダルとこちらのUTサンダルはひとりがすべてを組み上げていくには、なかなかにきつい仕様だったりします。。。

グルカサンダルなんかは見るからにパーツが多いのでなんとなくそのイメージがつくかもしれません。しかし実際最も手間が掛かるのがこのUTサンダルだったりします。この「気付いてもらえない苦労」というのはなかなかPezzettinoらしかったり、らしくなかったり。。。(笑)Pezzettino職人は見ためだけのために意味のない無駄な技術は使わないし、意味があればたとえ全く気付かれないところであってもとんでも技術を使う職人です。現代ではこうした報われないモノ作りはなくなってしまいましたが、昔はこうした意味あるモノ作りが当たり前のように行われいた時代があります。そういった意味でPezzettinoのモノ作りは本物の昔ながらのモノ作りもいえるかもしれません。

メゾンブランドすら本革を謳って最後の仕上げとして表面にプラスチックを塗布してしまう現代では最も報われないモノ作りだったりしますが。。。

職人いわく、見た目だけのために使う無駄な技術やみえないからといって使うべきところで手を抜くモノ作りというのは「PandaにFerrariのエンジンを載せ、FerrariにPandaのエンジンを載せるようなモノ作り」らしく、全てが台無しになってしまっている最も悲惨な状態とのこと。。。

これ、私にとってめちゃくちゃ目からウロコな言葉だったりします。。。


すみません、前々回から全く学ぶことなく今までで一番前置きが長くなりました 泣

話を戻す、、、というより始めます w





おそらく誰もがサンダルといって一番最初にイメージするものの一つがこの形状のサンダルではないだろうか。

それこそお手洗い用サンダルに始まり、名だたるメゾンブランドまでがこのデザインを採用しているといったある意味サンダル界の最高傑作と言っても良いかもしれない。

とはいえ捉え方を変えればこのデザイン、あまりにも完成しすぎているため「デザイン」という視点でいえば違いを表現しづらい鬼門ということも出来るだろう。

実際めちゃくちゃ優秀なデザイナーを多く抱えるメゾンブランド連中ですら、このデザインに対してはブランドロゴやネームを入れるに留まっているのだから如何に「完成しすぎてしまっている」のがわかる。

少しだけ脱線するが最も表現が難しく、そして困難な革靴が何かと問われれば、こちらイタリアのレジェンド級職人たちはほぼ満場一致で「ホールカット」だと口を揃える。

ホールカットデザインは誤魔化しが効かないからだ。対して最も醜い靴はダービーだと続く。。。がこれについては割愛、、、長くなりすぎる 苦笑

思うにこのサンダルデザインにもこの話に通ずるところがある。あのデザインは変えようがないのだ。

実はPezzettino職人が最も得意とするデザインの革靴はホールカットだったりする。そもそも当時北イタリア最高の職人と言われていた彼の師がホールカットでその名声を得ていたのだから、これは必然といえるかもしれない。

そんな彼が手掛けたこのサンダルはあえて詳細を語ることをせずとも十分に他とは一線を画す仕上がりになっていると感じて頂けるだろう。

とはいえ、これで結論としてしまえば本当に前置きだけの文章になってしまうから、もう少し突っ込んだ紹介をしていくのでもうしばらくお付き合いを(笑)



このデザイン、実は決してそれだけが鬼門なわけではない。甲とワイズで足をホールドする形状であるが、一歩間違えると凄まじく最悪な履き心地のものが出来上がる。特にこれはレザーを採用した場合に顕著で、他の素材と比べてより頑丈なレザーはそれ故に硬く、結果として足をガッツリと削っていってしまう。

これを革靴的なアプローチで作ってしまうと本当に相性は最悪で、もはや気軽さをウリにしているはずのサンダルが苦行化するというなんともせつない結果になりかねない。

このサンダルシリーズの投稿で幾度となく繰り返しているが、サンダルのフィッティングは「アバウト」であるのが望ましいのだ。とはいえこのデザインのサンダルはそれを許してくれないから難しい。。。というのも、この「アバウト」さが計算されていないと足が滑り込んでしまうからまともに歩けないものができてしまう。特にレザーの場合、沈み込みや革そのものの伸びがあるから若干攻めた作りをしたくなってしまうのが作り手心だったりする。

サンダルは負荷がかかる部分が局所的であればあるほど作りやすいとこちらも何度も繰り返しているが、この視点から見てみるとこのデザインが何故レザーで作ることに向いていないか想像出来るかもしれない。

とにかく負荷がかかる範囲が広すぎてしまうのだ。

たまにこのシャワーサンダルデザインにさらに親指ストラップを採用したレザーサンダルがあったりするが、隠さず正直な表現をしてしまうと正気の沙汰とは思えないというのが本音だったりする。甲部分を緩めにして、親指ストラップで滑り込みを防ぐというのであればこれは理にかなっているのでその限りではないが、たまにあるんですよ。。。甲もガッツリせめてて、親指ストラップつけちゃうやつが。。。苦笑

あれはたぶん本当に何も考えずに作っているのだと思う。。。多分その手のサンダルの痛さは半端じゃない。。。(泣)


とまあ、また話がそれたので戻そう 苦笑





雑な言い方をしてしまえば、あえてこのデザインのサンダルにレザーを用いて作る意味は薄い。ほぼデザインとしての意味合いに終始してしまうから、これほど世の中に溢れているサンダル界きっての最高傑作デザインにも関わらず特段研究される事もなかったのかもしれない。

デザインも鬼門でレザーで作る意味が薄いという、なんとも職人泣かせなシャワーサンダルデザインですが、そこは流石のPezzettino職人。。。

しっかりとその2つの側面を解決したサンダルに仕上っています。。。






その名もUltimate Toiletry Sandal...

この名称、実は職人非公認だったり。。。

職人曰く、「俺はトイレ用のサンダルなんて作っていない 怒」というのがその理由で、正式な名称はPasseggiata Sandal(お散歩サンダル)だとあえてこちらに記載しておく。。。

とはいえ、我々がこの名称をあえて使いたいという理由については理解してもらっているので、非公認ながら黙認してもらっているのでご安心を (笑)

このサンダルの見た目についてはあえて特に言及しない。というのも、このデザインにあえて説明を加えるのはもはや蛇足なような気がするからだ。

その代わりに肝心の履き心地についてはこちらでしっかりと触れていく。





こちらのモデルは今までの2モデルに比べて、よりフィッティングとしては革靴に近いといえる。甲とワイズでしっかりと足をホールドしなくては足が滑り込んでしまうため、どうしてもある程度のフィット感が必要なためだ。

今までのモデルのような負荷を逃がす構造、つまり「アバウト」に仕上げるにも限界があるのがこのデザインの難しいところ。

そこでPezzettino職人が採用したのが、アッパーの形状と特殊なカガリ縫い仕様、そしてハンドソーンだ。

もちろんこのフィッティングの前提にはグルカサンダルに仕込んだとある仕様から得た情報に基づくのだが、こればかりは企業秘密なので記載はご容赦を(泣)

なのでそれぞれ順に上の仕様について紹介していく。





まずはデザイン的に目を引くアッパーの形状だが、これは決して単なるデザインだけのものではない。一般的なシャワーサンダルデザインに比べて、若干前目で抑えているように見えるのではないだろうか。

このアッパーの形状、実はオリジナルサンダル起源のものだったりする。

オリジナルサンダル前半部分のストラップをみてもらうと腑に落ちるかもしれない。このたすき掛け構造はそうではない直線的な構造に比べてフィッティングに適度な遊びをもたらしてくれる。直線的な構造であれば必要以上に攻めたフィッティングをする必要があるが、この形状の場合はその必要はない。サンダルの理想である、「アバウト」な作りに繋がるとても重要な要素だ。

とはいえ、このたすき掛け構造もオリジナルサンダルで得たデータ無くしてはその意味を成さない。ただこの形状にすれば良いというわけではないのだ。

若干前目に見えるのはこのたすき掛け形状によるものであるが、その効果により一見すると無骨に見える強めのデザインにも関わらず着用すると不思議とエレガントに見えてしまう不思議な雰囲気にも一役買っている。以前に他の投稿でちょこっとだけ紹介したヴィクトリアンシューズ全盛期に用いられていたモデルデザインの技術だ。

そして目を引くアッパーに施されているカガリ縫いにも秘密がある。

このカガリ縫いはアッパーの前後に施されているが、それぞれ仕様が異なっていたりする。

前半部分は普通のカガリ縫いだが、後半部分はアッパー内部にカガリ縫いが仕込まれておりライニング部分からは縫い目が見えないようになっている。

これは後半部分のカガリ縫いがライニングにでてしまうと甲への摩擦で靴擦れの原因になってしまうということと、内部にそのカガリ縫いを仕込むことで後半部分にクッション的な役割をもたせることが出来るという2つの狙いがあっての仕様だ。

スポーツブランド系のシャワーサンダルの裏にスポンジ系のクッションが靴擦れ対策に採用されていたりするが、アッパーとライニングの間にこのカガリ縫いを仕込むことであれと同じような効果が期待できる。





実際このサンダルをすでに所有されている方であれば実感されているかもしれないが、このサンダルは今までのサンダルとは異なりしっかりと足をホールドしているにも関わらず甲後半部分に柔らかさを感じるのではないだろうか。これがその理由だ。

そして極めつけのハンドソーン。。。

このサンダルはハンドソーンウェルト製法の革靴に類する製法を用いている。

アッパーとソールのつなぎ目をみてもらうと目視できるのだが、ハンドソーンウェルト製法の革靴の中底に見えるのと同じ点々とした縫い目跡がある。

もちろんこのサンダルはウェルトを用いていないのでハンドソーンウェルト製法とは同じではない。

しかしこの手縫いにはこの製法と同じ意味合いが込められている。

グッドイヤーW製法とハンドソーンW製法では中に入れ込むコルクの量が異なる。後者の場合かなりその量は少ないのだが、それ故フットベッド成形後も大きくはフィッティング感覚は変わらない。

意外とこれを知らずにハンドソーンWの革靴をいつも通り超タイトフィッティングで購入してしまう人がいるが、それだと一生その苦行は続く。。。

このモデルの場合、アッパーのたすき掛け形状によってある程度の遊びが出来ているということもあり、こうした効果によるこの部分の沈み込みを最低限に留めたかったというのがこの仕様を採用した理由だ。

分厚い革を使ってかなりの期間履き慣らす必要があるサンダルもあったりするが、その点でもこのUTサンダルはそれらとは全く逆のサンダルといえる。

またこのハンドソーン仕様を用いることで、マテリアルとしてレザーを用いる意味合いも大きくなる。ソール内部の構造でこうして履き心地にアプローチ出来るのは、革の履物作りならではの強みだからだ。

ビリケンソールは足がソールに合わせていく必要があるが、レザーソールの本質はソールが足に合わせてくれるという事だ。






いかがでしょう?

デザインと仕様の目的が一致している製品というのは、なかなか興味深いとは思いませんか?


Bottega di Pinocchio

Yuki Takemasa

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