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  • 執筆者の写真Bottega di Pinocchio

GINO RAIMONDI 2

イタリアではとにかく暑い日が続いています。。。

流石にクーラーの必要性を感じ始めたので、今年は寝室にエアコンを設置しましたが今度は電気代に怯える日々(笑)

資源に乏しいイタリアはエネルギーコストが高すぎるので、うまい具合にやりくりしないと光熱費で痛い目をみます 泣

ただでさえもインフレの影響が半端ではないので、生活の知恵をフル動員。

本気で暑さ対策としてスイカを食べる日々ですw


今回は前回の続きとして、GINO RAIMONDIの地域性についてご紹介していきます。



(前回つり込みして持ち込んだ革靴のウエルト縫い完成)



前回ご紹介した通り、VENETOにおいて革靴市場は誂え靴からブランドに向けてのOEM生産へと発展してきました。

この発展はBolognaのように一つの工房がブランド化していく過程のような小規模から大規模へと発展していくのとは異なり、職人間で協業していくような過程で発展していきました。

例えばとあるブランドに向けた生産で自社内で対応出来ない技術や設備が必要とされた場合、それらを持つ職人や工場を一時的に呼び込んだりアウトソーシングしたりといった具合です。

これはカッティングや製甲などの工程に留まらず、自社でハンドソーンウエルト製法の靴が作れなければ別の場所から出来る職人を連れてきたり、接着の靴しか作っていない工場でマッケイ製法の靴を作るために一部の製法を外部委託したりといった感じで状況に応じてとても柔軟な協業が行われていました。

こうしたことが影響して実際この地域には「流しの職人」的な存在がおり、どこにも所属せせず個人で色々な工場や工房を回っている職人がいます。


正直、こうした環境を知ったところでその特殊性を想像するのはなかなか難しいと思いますが、このような表現をしたら多少はその面白さに気付いて頂くことが出来るのではないでしょうか。


この地域では製品をパーソナルメイドするだけではなくて、製造自体をパーソナルメイドすることが出来ます。


これでなんとなく理解しやすくなったとは思いますが、この点こそがVENETOらしいモノ作りなのでもう少しだけ深めていきたいと思います。



(少しづつ完成に近づいてきて、ベビーカーフらしい雰囲気が出てきました。)



皆さんが色々なお店で目にする革靴がどのようにしてバイイングされ、店頭にならべられているか考えたことはありますか?


ほとんどの場合、展示会で製品サンプルを見てその上でいくつかの提示されたオプションの中から取り扱う製品を選択するというのが一般的です。

モデルを見て、与えられた革や製法の選択肢から取り扱い製品の組み合わせを作るといった具合です。

メーカーによってはこうした仕様の選択肢がない場合もあるので、この場合は与えられたサンプルからのみバイイングすることになります。

一時期革靴市場で流行した販売店とメーカー両方のブランド名を冠した「ダブルネーム」などの実態が革のカラーや種類の組み合わせに終始していたことからもわかりますが、実は仕様の選択肢があるだけでもなかなか珍しかったりします。


それに対してVENETOで出来るモノ作りはかなり融通が利きくのが特徴です。



(出来上がりからは見えなくなってしまうけどとても大切なところ。チャン糸を使ったすくい縫いは本当に少なくなってしまった)



極端な話、デザイナー、木型、型紙、革、製甲・ウエルト縫い職人などを全て自前で準備して、組み上げを担当する大元の工場や工房に持ち込むことが出来ます。

ここまで自由度の高いモノ作りは他ではまずみることはないと思います。


というのも全ての工程に掛かるコストが丸裸になってしまうため、最終的な製品価格が依頼主に丸見えになってしまうためです。

革、型紙、デザイン、縫製など依頼主が持ち込むものは全て価格が明確になってしまいます。

ここまで透明化してしまっているとさすがにメーカー有利な価格はつけられないため、通常はこのような持ち込みは受け付けてくれません。革の持ち込みすら基本的には断られます。

こうしたモノ作りのあり方が受け入れられるのはブランドへのOEMを背景に革靴市場が発展してきたVENETOならではだといえます。


こうしてみていくととても魅力的な地域のように見えてきますが、バイイング視点でみていくと実はそうとも言い切れません。


製造を自身でパーソナルメイド出来るということは、裏を返せば自身でディレクション出来なければまともにモノ作りが出来ないということです。

これはバイイングではなく、明確にモノ作りの分野ですし、正確には企画というノウハウが必要になります。


こうした事もあってこの地域では同じ工房や工場で作らせたものでも、その製造を仕切っている人間次第で全く異なる革靴が出来上がります。

どこまでを大元に任せるかで大きく変わってくるモノ作りは正にVENETOならではといえます。


とある職人の言葉を借りると、この地域での靴作りはオーケストラのようなモノ作りです。

指揮者(ディレクションする人間)がいて、オーケストラ(革靴を構成する様々な工程を担当するメンバー)を揃えて、指揮を振って彼らと自身の表現したい靴を作る。。。


この一言は本当によくこの地域のモノ作りを表現しているなと思うと共に、個人的にとても響いた言葉です。


毎度のことながら前置きがとてつもなく長くなってしまいましたが、こうした背景もありこのGINO RAIMONDIには予算の許す限り私が出来る限りの様々な要素を詰め込みました。



(すっぴんなのにこのしっとりとした表情はヴィンテージレザー独特の風合い)


次回はやっと、そんなGINO RAIMONDIそのものに焦点を当てた投稿をしていきます。


私の悪い癖でどうしても本題が後ろになりがちなシリーズ投稿ですが、少しでもこうした歴史・文化や地域的な背景を知って頂き、それらを少しでもGINO RAIMONDIから感じてもらえたら嬉しいです。




それではまた次回お楽しみにー!


Bottega di Pinocchio

Yuki Takemasa

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